「優しい暴力の時代」チョン・イヒョン著 斎藤真理子訳
「優しい暴力の時代」チョン・イヒョン著 斎藤真理子訳
朝、「僕」はペットのシャクシャクを置いて出勤。勤務先は「金満老人の養老院」の別名を持つ高級住居型シルバーコミュニティーだ。事務所で制服に着替え、入居者たちの部屋に向かおうとしたとき、ミス・チョ女史から着信があるが、勤務中は通話を禁じられている。
5歳のとき、母が亡くなり、以後、父親はさまざまな女性と交際。ミス・チョもそのひとりだった。僕が全寮制の高校に進学した後、父と暮らしていたのが彼女だ。数年前に、SNSを通じて彼女が僕を捜し出し、以来、メッセージをやりとりしたり、たまに食事したりするようになった。終業後、僕は彼女が亡くなったことを知る。(「ミス・チョと亀と僕」)
「都市の記録者」の異名を持つ韓国の人気作家による作品集。
(河出書房新社 1210円)