「〈本の姫〉は謳う」多崎礼著
「〈本の姫〉は謳う」多崎礼著
2つの月に照らされた砂大地。少年アンガスは砂丘からすべり落ちた。「私はここだ!」という声をたよりに斜面に埋もれた本を拾い上げた。砂を払い落とすと「乱暴に扱うな」という声とともに人間の6分の1くらいの女性の幻影が現れた。
その「姫」を連れ、本を抱えて歩き出すと同心円状に石柱が並んでいる広場に出た。アンガスは中央の石壇のくぼみから小さな手鏡を取り出す。アンガスが鏡に息を吹きかけると奇妙な模様が浮かび上がる。その上に水をこぼすと、「Trust(信頼)」という文字が浮かび上がった。
本に宿る「本の姫」とともに、大陸に散った文字を探す少年を描いた壮大なファンタジー。 (講談社 1980円)