「フィクションのなかの警察」熊木淳著
「フィクションのなかの警察」熊木淳著
探偵が事件を解決する「探偵小説」との対比で考えると、「警察小説」は警察が事件を解決する小説だ。「警察」は個人ではなく、さまざまな役割を持つ人間の集団である。
以前は警察という組織について問う作品はなかったが、警察組織の記述に初めて取り組んだのが横山秀夫である。横山以前の警察小説は「警察が舞台になるミステリー小説」でしかなかった。警察は刑事部門と公安部門があり、刑事事件を扱う刑事小説と公安事件を扱う公安小説、さらに公安と近い監察部門を扱う監察小説もある。この監察小説に目を通すことで、90年代後半に横山秀夫が生み出した警察小説の現状を知ることができる。
「警察小説」を論考した一冊。 (笠間書院 1980円)