俳優・長谷川初範が語る貧乏時代「4畳半に倒産した父が」
そんな狭い部屋に、会社を整理、離婚した父が転がり込み驚きました。債権者におカネを払っても、家族には一銭もくれないんだから。ただ近年、仕事で紋別へ行くと、街のみなさんがよくしてくれる。スタッフに「王様ですか」って言われるくらい。それは父親が紋別で債権者を裏切らなかったから。今はありがとうと思っています。
■水商売のアルバイトは才能がありそうで避けた
アルバイトは肉体労働が多かった。深夜、新宿で電話線を通しているパイプを地下から掘り出したり、多摩川の土手の草刈りをしたり。水商売は才能がありそうで、俳優へ戻ってこられなくなるから避けました(笑い)。
そうやって食事や睡眠を削ってまで映画や演劇を見ていたのは必死だったから。何としても俳優としていっぱしにならなきゃいけないと思っていた。学校の講義はいつも一番前で聞き、自分でロシアの俳優兼演出家のスタニスラフスキーや精神分析の本を買って勉強して先生に質問したり。先生は映画や演劇の招待状をくださったり、おカネを貸してくれたりしてかわいがってくださいました。