俳優・仲代達矢「90歳で舞台に」貫く気骨と反権力の精神
「タルチュフ」はペテン師で、信心深い男を装って金持ち一家に取り入り、財産だけでなく、若い娘も手に入れようとする。今は亡き師匠千田是也氏が演じる姿を25歳で見て「いつか自分も」と志したというが、パンフレットなどにはこんな思いを寄せている。
「権力を笠に着た人間を徹底的に皮肉った…モリエールの傑作喜劇です。おそらく現代の日本でもあちこちで見られる風景かと思います。大いに笑って下さい」
戦中派として、右傾化する日本の現政権、権力者に対し、物申すところが多分にあるのだ。
来年11月からは太宰治原作の朗読劇「人間失格」の上演が決定、さらにその翌年も山本周五郎原作にして、亡き妻・宮崎恭子さんが脚本家・隆巴として最後に手がけた作品「いのちぼうにふろう物語」の再演話が進んでいる。
「そろそろ引退の年齢だけど、まだやりたい作品は数本ある」と仲代は前を向く。
「仲代さんは毎朝、稽古場に立つと『きょうは軽く』などと言いながら、いつも全開となり、最後には一番多く汗を流したりしている。同世代の役者、監督、関係者が亡くなっていき、かつての作品をDVDなどでひとり見直して涙することもあるそうですけど、舞台に立てば、現役バリバリ。体調はひたすらメンテナンスで保ち、毎晩のようにステーキを平らげているから、声量もパワーも凄いんです」(事情通)
今回の舞台裏では、役者・スタッフをこう鼓舞したそうだ。
「緊張感を集中力に変えて、最後まで走りきりましょう」
八千草薫さんも天国から応援しているに違いない。