石原さとみ、藤原竜也の軽妙洒脱な演技=さいたま芸術劇場
伯爵夫人が貧しい娘を息子の妻に迎え入れようとするのは当時の社会通念上ありえず、ほかにも整合性に欠ける部分があるため20世紀になるまで上演される機会はほとんどなかった問題作だ。
確かに、「ロミオとジュリエット」ならいざ知らず、バートラムからすれば好きでもない女につきまとわれ、それを母親や国王までが後押しするなどとんでもない話。一方のヘレンにとっても手練手管でバートラムと結ばれたところでその愛に展望はあるのかと問題は残る。
もちろん、この作品に今日の視点から「女性の積極性=女性解放」を重ねることはできる。
嫌われても嫌われても追いかけて相手の愛を手に入れるヘレンはいかにも現代風の娘だ。
石原はそんなヘレンの積極性とピュアなたたずまいを好演。粒立ったセリフが客席によく通る。藤原は珍しく、柄に合わない非情なダメ男っぷりを軽妙に演じた。吉田はいぶし銀の演技で舞台を引き締め、溝端淳平、河内大和らがしっかりと脇を固めた。
2時間40分。大ホールで29日まで。
★★★★