立川談志と柄本明に共通する、楽に生きられない狂気と愛
「楽に生きない」ことは周りの人間も楽ではないということだ。弟子や家族は大変だが、こういう関係に限って、お互いの愛は誰よりも深い。
柄本さんもいろいろと似ている。「近寄り難い雰囲気」「芝居を壊し、予定調和を何より嫌う」「既存の常識を越える怪演、しかもめっぽう面白い」30分の映像では、当然柄本さんの核心に触れることは出来ない。ただただ常人ならざる日常を映し出すだけになる。
だが、その柄本さんを愛し慕う劇団員は80人もいるという。決して教祖のような君臨した存在ではない。慈愛に満ちた集団だ。家族愛も素晴らしく、亡き妻角替和枝さんへの愛は何よりも深い。
おふたりに共通する狂気と愛。その生き方は我々に「楽に生きてて楽しいかい」と突きつけられる。だが、その問いかけは妙に怖くない。
私だけが知るドキュメント。「本日も休診」の稽古場で一度、柄本さんが大声で怒鳴って現場を凍りつかせたことがあった。しかしその後、私の耳元にこっそり「怒ってごめんね」と耳打ちする優しく心穏やかな一面が、柄本さんの本質であると思う。