著者のコラム一覧
ラサール石井タレント

1955年、大阪市出身。本名・石井章雄(いしい・あきお)。鹿児島ラ・サール高校から早大に進学。在学中に劇団テアトル・エコー養成所で一期下だった渡辺正行、小宮孝泰と共にコント赤信号を結成し、数多くのバラエティー番組に出演。またアニメの声優や舞台・演劇活動にも力を入れ、俳優としての出演に留まらず、脚本・演出も数多く手がけている。石井光三オフィス所属。

立川談志と柄本明に共通する、楽に生きられない狂気と愛

公開日: 更新日:

「楽に生きない」ことは周りの人間も楽ではないということだ。弟子や家族は大変だが、こういう関係に限って、お互いの愛は誰よりも深い。

 柄本さんもいろいろと似ている。「近寄り難い雰囲気」「芝居を壊し、予定調和を何より嫌う」「既存の常識を越える怪演、しかもめっぽう面白い」30分の映像では、当然柄本さんの核心に触れることは出来ない。ただただ常人ならざる日常を映し出すだけになる。

 だが、その柄本さんを愛し慕う劇団員は80人もいるという。決して教祖のような君臨した存在ではない。慈愛に満ちた集団だ。家族愛も素晴らしく、亡き妻角替和枝さんへの愛は何よりも深い。

 おふたりに共通する狂気と愛。その生き方は我々に「楽に生きてて楽しいかい」と突きつけられる。だが、その問いかけは妙に怖くない。

 私だけが知るドキュメント。「本日も休診」の稽古場で一度、柄本さんが大声で怒鳴って現場を凍りつかせたことがあった。しかしその後、私の耳元にこっそり「怒ってごめんね」と耳打ちする優しく心穏やかな一面が、柄本さんの本質であると思う。

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