「マイファミリー」も「元彼の遺言状」も…春ドラマは“結末バレバレ”の凡作ばかりだった
4月クールのドラマが終了した。感想は「ありふれた結末の凡作ばかりではなかったか」──。
ミステリー小説では、「一番怪しくない人物が真犯人」というのがセオリーだが、春ドラマはまさにそのまんまだった。
連続誘拐事件と家族の葛藤を描いた「マイファミリー」(TBS系)は、捜査の指揮を執る吉乃栄太郎・捜査1課長(富澤たけし)の犯行だった。温和な人柄で、部下から慕われている人のいいオジサンに見えたが、ドラマファンには「そういうヤツこそ怪しい。最後のどんでん返しで本性を現すのだろう」と見抜かれていた。
「元彼の遺言状」(フジテレビ系)は、「お金にならない仕事はいたしません」と言い放つやり手弁護士(綾瀬はるか)の活躍を軽妙に描いた1、2話完結の推理もので、アガサ・クリスティの小説がヒントになっていた。最後に事件の関係者が集められ、「犯人はこの中にいます」と名指しされるのだが、寡黙な獣医師、ホームレスに食事と寝場所を提供している神父、無医島に来てくれた誠実な医者など、各話とも“いい人”ばかり。それが逆に、登場した途端に「ああ、この人が真犯人なんだな」と読めてしまうワンパターンだった。
まさかそんなベタな展開…がその通りに
犯罪コーディネーターと刑事の異色コンビが、殺人請負人「クリミナルズ」と死闘を演じる警察ドラマ「インビジブル」(TBS系)は、捜査側に内通者がいて、すべての殺人を仕掛けていた。警視庁監察官の猿渡紳一郎(桐谷健太)だ。現場の行き過ぎを監督するために派遣されてきたエリートで、もうそれだけでひと癖ありそうである。そもそも桐谷が素直な役をやるはずがない。これまたバレバレ。
ミステリーではないが、「未来への10カウント」(テレビ朝日系)も、お約束通りのハッピーエンドだ。高校の弱小ボクシング部、そのコーチを任された元天才ボクサーのふてくされ中年(木村拓哉)、顧問の明るくてチャーミングな女性教師(満島ひかり)とくれば、ボクシング部は猛練習の末に大きな大会で勝ち、コーチは生きがいを見つけ、顧問の先生はコーチに恋して……とすぐ読める。まさかそんなベタじゃないよなと見ていると、まるっきりその通りになった。
つじつま合わせに四苦八苦
「近ごろは、ドラマの結末や犯人を推測して、SNSなどで披露しあう考察視聴が広がっています。連続ドラマは全話平均視聴率で評価されてきましたが、いまは考察視聴が盛り上がっているかどうかの各話ごとの数字と再生数が重視されます。脚本もそれに合わせて思わせぶりなエピソードを毎話ちりばめるので、最後はそのつじつま合わせに四苦八苦。『そうきたか、やられた!』という意外感がないのはそのためでしょう」(放送作家)
夏ドラマで期待できそうなのは「六本木クラス」(テレ朝系)か。韓国のヒットドラマ「梨泰院クラス」のリメーク版だから、ストーリーも結末もしっかりしているはずだ。
(コラムニスト・海原かみな)