音楽は「生きる」と「夢を見る」の間にあるというのが、音楽を生業にしてきたぼくの実感
ところでMCCFには表看板となるWEBメディアがある。その名は「OTOJIRO」。これは福岡博多のエンターテインメントの始祖、川上音二郎に由来する。彼の一座が1900年に欧米興行を行った際にイギリスで録音した「オッペケペー節」は、日本人初の音盤レコーディングとされている。人口を考えれば特異といえるほど多くの有名シンガーやミュージシャンを輩出してきた福岡の音楽文化は、いわば創業者利益によってもたらされた面もあるのだ。
■博多っ子は「のぼせもん」
先述した『博多っ子純情』の原作者で、川上音二郎の生涯に精通した漫画家の長谷川法世さんがOTOJIROで語るところによれば、博多の街は「もともと博多どんたく(毎年5月開催の祭り)の源流である博多松囃子があって、芸事の好きな風土」なんだとか。そんな博多っ子の気質を、地元では「のぼせもん」と呼ぶ。つまり情熱過多な土地柄ってこと。
音楽は「生きる」と「夢を見る」のあいだにあるというのが、30年以上音楽を生業にしてきたぼくの実感だ。生活を蔑ろにした音楽は必ずしっぺ返しを食らうものだし、音楽のような彩りを欠いた生活もそれはそれで味気ない。