大槻ケンヂさん「目指せ!ドーム」 5万人を集めたワンマンライブを一度演りたい
筋肉少女帯のメンバーと還暦の武道館ライブを
もしミック並みのコンディションに仕上げられたら、歌って踊れるライブを広い会場で演りたいですね。
僕は元々アングラパンクの出身ですが、小さいライブハウスから徐々にキャパを上げて、いつか大きなホールで演るというロックドリームは持ってなかったんです。
たまたま1980年代のバンドブームにのっかれてデビュー2年ほどで武道館ライブができました。大きな会場で演るのをモチベーションにしてなかったから、当時はうれしくなかったんですよ。でも、今の年齢になって、ガツガツした気持ちではなくて「大きい会場で多くの人の前で演ってみたい」と前向きに考えるようになりました。
まず還暦になる3年先に武道館ライブを実現させるのが間近の目標。演る時は筋少メンバー全員還暦だといいなあ。
同年代が結構、武道館でライブをして頑張ってるんですが、冬は会場代が安いのか、冬に多い(笑)。冬の武道館は寒いんですよ。底冷えがするくらい。体にこたえるから僕は春か秋に演りたい。その先には東京ドームでライブ。これは死ぬまでの夢です。
今はユーチューブ動画が世界中で見られますよね。ファンが動画をシェアしたりで曲が広まります。アニメソングの水木一郎さんが南米のどこかへ行ったら、空港まで出迎えの人だかりができたくらい人気で驚いたそうです。みんな日本語でアニソンを歌ってたといいますからね。
海外の黒人の方が僕の歌を日本語で歌ってる動画を見たこともありますから、大槻ケンヂが南米のどこかで人気になることもあり得ないことじゃない。大したもんだなあと。僕は旅行が苦手で海外ライブは考えられないから、海外の人も含め、僕のファン全員を集結させられたら、東京ドームで演れるのではと。今は円安ですし。
5万人ライブはワンマンでは一度もないから死ぬまでに一度演りたい。この年で「目指せ! ドーム」なんて掲げるのもいいんじゃないかと。
東京ドームといえばストーンズが初来日した90年の公演を見に行き、ミック・ジャガーは動き回ってましたよ。あの時は50歳になる直前でしょ?
80歳になっても変わらず動くのがすごいだけでなく、ロックンロールするモチベーションもすごい! 「そのモチベはどこからくるの?」と笑っちゃいます。尊敬します。ミックとポールは日本のベテランロッカーにとって大きな目標となってます。
「ライブで疲れた~」「モチベ上がらない~」なんて愚痴って、周りやファンから「何言ってるんだ! ミックとポールを見ろ!」と言われたら「すみません」としか言えないでしょう。
国内だと、矢沢永吉さん。本当にすごい。その少し下の世代だと桑田佳祐さんやユーミンさん。中にはライブの前に2キロ泳ぐ先輩ロッカーもいますからね。みなさんスタミナがすごい。僕はジョギングしようにも膝が痛くて……。
僕はステージ衣装の下に膝用のサポーターをガッツリしてますからね。本番前に見るとまるでプロレスラー。電流爆破マッチに挑む大仁田厚さんみたいですから。
■40歳でやめた小説もまたトライしたい
他にやりたいことは小説かな。30代は小説を書き倒していたけど、40歳で筋少を復活させてからはピタッとやめたんです。最近はこの年になって書きたい気持ちが湧いてもう一度トライしたい。小説が売れない時代にあえて!
今は新たにエッセーを書いてます。僕はパソコンがまったく使えないアナログ人間。いまだにコクヨの原稿用紙に鉛筆でしこしこ書くんです。
呪いのような下手な字で書いた原稿でも、小説だと何百枚にもなりますから、さすがに編集者に悪いなあとずっと感じていたんです。一時期なんか僕の文字を解読するだけのアルバイトを雇ってたらしい。都市伝説じゃないですよ。
今は書いた原稿を読み上げ、スマホに音声入力して編集者に送信することができるようになりました。「この方法なら小説もありかな!」と。小説を書きたいけど、ワープロが苦手な人にはオススメです。ただ、手書き原稿を音声入力する時、「あたし、○○なのよね~」と女性のセリフはオネエ化して読んでしまう(笑)。
まずは還暦までに武道館で演ります! その先に東京ドーム。僕は歌詞で「夢はかなわないこともある」と歌ってるのですが、夢はずっと言い続けてると、結構、かなっちゃうこともあるんですよね。言わないよりは可能性は高くなることを、この年で証明してみたいですね。
(聞き手=松野大介)
▽大槻ケンヂ(おおつき・けんぢ) 1966年2月、東京都出身。82年に筋肉少女帯を結成。99年に脱退。2006年に復帰。小説「グミ・チョコレート・パイン」など著書多数。