表情乏しい人が満面の笑み 旅行に行き“ミラクル”起こそう
昨年秋の台湾旅行でも、数々のミラクルがあった。その経験者のひとりがNさん。50代で認知症を発症した夫の在宅介護を始めて25年になる。
夫は寝たきりで、旅行の2カ月前にどこかで疥癬ダニに感染。感染の拡大を防ぐため、2カ月間一歩も外出できなかった。それにより一気に体力が衰え、ミルですりつぶした食品を少量しか受け付けなくなっていた。
「このままずっと流動食になるんだろうと、覚悟しました」(Nさん)
旅行どころではない状況だったが、ほぼ毎年旅行に参加している夫は、1年前、前回の旅行から戻ってきたその日から「また台湾行くんや」と楽しみにしていた。Nさんも、旅行をやめることは少しも考えなかった。
荷物には夫のために、食事をすりつぶすすりこぎ、バナナ、軟らかいパンなどを用意した。
ところが、行きの飛行機で最初のミラクルが起こった。
「機内食で出てきたレタスを、パリパリパリッと食べたんです。生野菜なんて長く食べていませんでしたから、『のみ込み、大丈夫?』と心配になったのですが……」(Nさん)