「EGFR」と「遺伝子変異」に注目が 大腸がん治療最前線
ジレンマは、薬がすべての患者に一様に効くのではないことだ。Aという薬が、ある人には抜群に効いても、ある人には効かない。ということは、効く・効かないを明確に示すバイオマーカー(指標)があれば“無駄撃ち”のない効率の良い治療ができる。そこで今、バイオマーカーの探索に力が注がれている。
■目を見張るほど予後が伸びる
まず注目されたのが、大腸がんの22~77%に発現する上皮成長因子受容体「EGFR」だ。EGFRはがん細胞の増加や増大を促す。そこで、複数ある抗がん剤の中からEGFRの働きをブロックする分子標的薬(抗EGFR抗体)を選び、標準治療が全て効かなかった患者に投与。すると、がん悪化のリスクが46%減少した。発現率に関係なく、抗EGFR抗体が有効ということもわかった。
次に注目されたのが「遺伝子変異」だ。EGFRからがん細胞に増殖や転移などを指示する信号が送られるが、この伝達を担うタンパク質の遺伝子の変異(RAS遺伝子変異)が50%の割合で見られることがわかったのだ。
研究の結果、「RAS遺伝子変異があると抗EGFR抗体がまったく効かない」「RAS遺伝子変異がないと抗EGFR抗体でがん悪化リスクが減少する」ことが判明。ほかの遺伝子でも同じ結果だった。