高齢者の感染性心内膜炎の緊急手術は難易度がハネ上がる
一方の生体弁は、ブタや牛の弁などを人間に使えるように処理したもので、生体構造に近いことから血栓ができにくい利点があります。
しかし、耐久性が低く、15~20年ほどで劣化して硬くなったり、穴が開いてしまいます。そのため、いずれ再び弁を交換しなければなりません。
■足かけ20数年で弁置換術を3回行った患者も
先日行った3回目の手術は、まさに劣化して傷んだ生体弁を交換するものでした。患者さんはすでに80歳を越えていることもあり、今回も生体弁を使いました。耐久性が低くてもこの年齢になると20年近くはもちますし、今後はカテーテルによる弁置換術も普及するでしょうから、おそらくこれが最後の手術になるでしょう。この年齢の再々手術でも順調に終わり、回復も順調でした。女性の強さをあらためて感じさせられた症例でした。
弁を交換する弁置換術が3度目となっても、手術自体の難易度がものすごく高くなることはありません。ただ、私の父親は、27年前に3度目の弁膜症の手術を受けて亡くなっています。当時、私は35歳で、自ら執刀するだけの技量がまだありませんでした。手術は信頼できる第一人者の先生にお願いしましたが、手術の1週間後に息を引き取りました。
こんなことは二度とあってはいけない。そう強く誓っただけに、やはり3度目の手術は身が引き締まります。