M・アントワネットの「一夜にして白髪に」は実際あるの?
フランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネットには「処刑される恐怖で、一晩のうちに髪が真っ白になった」という有名なエピソードがある。ボクシング漫画「あしたのジョー」でも、主人公・矢吹丈との壮絶な打ち合いで相手選手のホセ・メンドーサが試合終了後、白髪になる場面がある。
本当に、一夜にして白髪になることはあるのか。「新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター」(千葉県)の瀧川恵美センター長が言う。
「ブリーチ(脱色)やヘアカラーをしない限り、一夜にして頭髪のすべてが白髪になることはありえません。起きたとしても髪の根元の部分が、1日に伸びる0.3~0.4ミリが白くなるくらい。そのような話は、恐怖心や強烈なストレスを分かりやすく表現するための誇張でしょう」
そもそも髪の毛は紫外線から頭部を守るために存在するが、体内の不要な物質が排出される排泄(はいせつ)器官でもあるという。髪の毛は切っても痛くない。それは神経も血管もなく、細胞の核もなく、生きていないからだ。
生きているのは頭の皮膚に潜っている部分。頭皮から外に出ている毛は、皮膚の表皮にできるアカのようなもの。そのため覚醒剤やヒ素などの摂取を調べるのに、体で最も長く残る髪の毛(排泄物)が使われるという。