思いもよらない些細な出来事が患者の沈んだ気持ちを変える
■熊、コスモス、2本の虹…
再発を告げられた時、Bさんは奈落に落とされ、人に会いたくなくて部屋に籠もってしまったといいます。しかしある日、町内放送のスピーカーから「熊が現れて畑を荒らしました。ご注意ください」という声が聞こえてきたことをきっかけに立ち直れたそうです。
「びっくりして、怖くなって、隣の奥さんと『熊が現れたらどうしようか』などと会話を交わしました。なぜそれがきっかけになったのかは分かりませんが、その頃から少し立ち直れたような気がするのです。その日の日記には『熊だってドングリが少ないと山から下りてくる。熊も生きたいんだなあ』と書いてあります。熊が私を助けてくれたのかもしれません」
その後、腫瘍マーカーが上がってきた時は本当に落ち込んだといいます。担当医から「治療しましょう」と言われ、Bさんは「今度こそ治らない。きっと死ぬ。なんのために治療するのか?」と考えたそうですが、黙って化学療法を受けました。
そんなBさんを救ったのが庭に咲いていたコスモスでした。ある日、台風が来てコスモスはすべてなぎ倒されてしまいました。Bさんは手入れする気にもなれず、そのまま放っておいたそうです。