映画「がんになる前に知っておくこと」製作者に聞いた
がんは怖いもの。がん治療は一日でも長く生きるために行うもの。これらは、取材を始める前の私のがんに対するイメージです。
しかし、完成までの3年近い年月の中で、私の考えは変わりました。今はがんと共存できる時代。医療には100%はなく、何を自分が大切にしているかを考え、「人生の質(QOL)」を第一にした治療を探っていくべきだと。がんについて知ることで、がんは怖いものというイメージは消えました。
未公開シーンなのですが、出演者のひとり、腫瘍内科医の勝俣範之先生(日本医大武蔵小杉病院)の診察の場面を撮影したことがあるんです。その患者さんは、もともと「抗がん剤は絶対に嫌、絶対にやりたくない、勝俣先生も拒否」という方でした。ところが、趣味の音楽で勝俣先生と話が合った。勝俣先生のパーソナリティーに触れ、抗がん剤治療に偏見がなくなり、現在も抗がん剤治療を受けられています。
取材を通じて最も強く感じたのは、医師や看護師ら、さまざまながん治療に関わる人は皆、がんについて、患者について、熱く親身になって考えてくれているということ。ところが、限られた診療時間では、患者にそれが伝わりづらい。結果的に医師へ不信感を抱き、有効性が証明されていない民間療法などへ走ってしまう患者がいる。一方で、勝俣先生の患者さんのように、拒否の気持ちがガラリと変わる方もいる。