引退まで試合では吐き続け…小谷野栄一さん語るパニック障害
でも、寮の廊下から目の前にあるグラウンドで他の選手がプレーしている姿を見ていると、むなしくて、情けなくて……。うつ状態に陥っていたのかもしれないですね。球団に「実家へ帰って、少しゆっくりしてきたら?」と提案いただき、実家に帰ったらぐっすり眠れました。他人の目がなくなって落ち着けたのかもしれません。実は小学生の頃から、学校の授業で当てられそうになるとお腹が痛くなるような性格で、注目されるのが得意ではなかったんです。
両親が何も知らないかのように、いつも通り接してくれたことに救われました。僕は会社員の父、母、姉、妹の5人家族なのですが、両親は奨学金を借りてまで僕を大学に入れて野球をやらせてくれました。
高校からはずっと寮生活で、姉がランニングシューズを買ってくれたり妹がお小遣いを送ってくれたり、家族みんなで僕を支えてくれました。
念願のプロになって、契約金で奨学金を一括で返済できたので、「早く結果を出してこれからは家族に恩返しをしたい」「活躍する姿を見せたい」と強く思っていました。そんな気持ちを両親に打ち明けたら、「何も望んでいないのに」と言うんです。ひとりで気負っていたんだと気付かされました。