術後20年を考えると「グラフト」はやはり動脈が優れている
2016年に報告された5年後の死亡率でも両群に差はなく、今回の10年後も同じ結果だったということになります。ただ、この報告だけで「バイパスに使うグラフトは動脈も静脈も変わらない」と判断するのは間違いです。
経験上、術後10年では両者にそれほど大きな差は出ません。しかしこれが20年になると、バイパスのグラフトに静脈を使った患者さんは再治療が必要になるケースが多くなります。静脈はやはり耐久性が劣っているのです。
■採取は切開の方が安全で確実
寿命を考えると、80歳の患者さんが冠動脈バイパス手術を行う場合は静脈を使ってもそれほど影響はないといえるでしょう。しかし70歳で手術する場合は、やはり動脈を使わなければ、その後のステント治療や再手術の可能性が高くなってしまうのです。
これからは多くの人が100年を生きる時代になりますから、私は「110歳までトラブルなく生きられる心臓手術」を目指しています。そのためには、やはりバイパスに使うグラフトは動脈が最適といえます。