診断書で職場環境を改善することも「うつ病」治療の一環
「休職には損益分岐点がある。メリットがデメリットを上回っているのは短くて数日、長くて数週間。数カ月ではない。そのポイントを超えると、状態は坂道を転げ落ちるように悪化します」
こう語るのは、「独協医科大学埼玉医療センター」(埼玉県越谷市)こころの診療科教授の井原裕医師(顔写真)。この井原医師が提言するのは、「休職せず働きながら治す精神科医療」だ。
そんな井原医師は、うつ病患者に安易に処方されることの多い抗うつ薬も、実はうつ病患者の2割程度にしか効いていないという考えを持っている。それでは、井原医師はどのようにうつ病を治療するのか。それは、職場環境と生活習慣の改善だ。
生活習慣については、次回以降に解説することにして、長時間労働など、自身にはいかんともしがたい職場環境はどうやって改善するのか。それを可能にするのが、健康管理に関する事業者側責任を明記した診断書だ。
「現在、心身疲弊状態にあり、十分な睡眠(7時間超)の確保なくして、業務継続は困難です。就業継続は、会社側が安全配慮義務の一環として、『働き方改革関連法』(2019年4月施行)に規定する『月45時間、年360時間』以下を順守するのでないのなら、不可能であると判断します」