「主人は今日、何を食べてくれるのかしら」
そう語る玉置さん自身も、つらい介護経験を持っている。
ご主人が原発「大腸がん」の術後、5年後に再発し、すい臓がん、胆管がんに転移した。カメラマンの主人は再発後のがん治療を放棄し、余命の3年を仕事にかけたのである。通院、入院を拒否し、自宅で仕事をこなす主人の介護に、玉置さんはやがて介護を楽しむようになった。
毎日の食事では、玉置さんは主人に5種類ほどの食事を作ってテーブルに並べた。
例えば、日本そば、うどん、カレー、チャーハン、野菜炒めなどである。
「さて、主人は今日、何を食べてくれるのかしら。ゲーム感覚で、私は多分この食事よと見当をつけていると、本当にその食事を選択してくれるの。“わあ、当たり”と声を出し、夫婦で笑い合うのです」
長い介護期間に、こうした介護の楽しみ方も見つけだした。主人は自宅で現職の看護師夫人にみとられながら、62歳の生涯を終えている。