新型コロナ<6>十分注意していたのにあっさり感染してしまった
「コロナウイルスは人類の敵です。感染の阻止を教える教科書はないし、治療薬さえもまだありません。感染を抑え込むには、外出を禁止する以外にないと思っています」
自分以外に、両親、兄弟、親類、友人、恋人が感染したら、どれほどの不安を抱くか。
「パチンコ店や飲食店で遊んでいる場合ではありません」
10日間ほど病室で、コロナと格闘の末に生き地獄から生還した渡辺さんの発言は重い。
言葉を続けて渡辺さんは、「本来、人間の目的は生きることにあります」と言い、こうも付け加える。
「私は普段から、交通事故に遭う可能性、電車など人身事故に巻き込まれる可能性、ホームで人から押される可能性、テロリストに遭遇する可能性、通り魔に襲われる可能性、ペットが牙を向いてくる可能性、地震や建物倒壊で犠牲になる可能性……、これら日常で経験する危険性を見聞していますから、想像がつきます。だから急場の対応や、危険から事前に避難することも可能です」
でも、こうした各種の危機を予想できる中で、危険性にまったく対処できない恐怖が一点ある。人類を襲い、人から人に感染させる未知の「ウイルス」だ。
「暗闇からいきなり銃弾を撃ち込んでくるようなウイルスは、避けることができません。絶対に甘く見てはいけないと思います。私だって感染はしたくないと思い、行動には十分に注意していたのに、あっさりと感染してしまったのです」 (つづく)