<3>「抗体検査」が陽性でも、だから安心…というわけではない
新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の本当の顔を明らかにするためには、「抗体検査」が重要だといわれている。生体の免疫反応によって作られる抗体を検出する検査で、「これまでに新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうか」がわかる。
抗体ができるまでには時間がかかるため、PCR検査のような「急性期の診断」には適さない。しかし、無症状感染者も含めた本当の感染者数が把握できることから、日本でも厚労省が東京、大阪、宮城で大規模抗体検査を実施する。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)でウイルス学・ワクチン学の研究に携わり、新著に「感染を恐れない暮らし方」がある本間真二郎氏(七合診療所所長)は言う。
「抗体検査には多くのメリットがあります。不顕性感染を含めた感染者数がより正確にわかるため、感染する割合、発病する割合、重症化する割合、死亡する割合などが正確に計算でき、病態の解明が大きく前進するのです」
抗体とは、侵入した病原体から生体を防御するために働く「免疫グロブリン」(Ig)というタンパク質で、特定の病原体だけに反応して排除する。「獲得免疫」と呼ばれる生体のシステムによって、病原体にさらされることで後天的に作られる。いくつか種類があり、感染して最初に作られるのが作用が限定的なIgMで、その後にIgGが産生される。IgGは再び同じウイルスが侵入した際はすぐに攻撃して強力に排除する。この状態になれば「免疫が確立した」ということになり、同じウイルスには感染しづらくなる。ただし、今回の新型コロナウイルスの抗体については、まだわかっていない点があって課題は多い。