最先端の心臓手術であらためて痛感する「準備」の重要性
ここ3回ほど、最近の心臓手術についてお話ししました。検査機器や医療材料の大幅な進化によって、以前であれば手術できなかったり、手術できても身体機能の一部を失ってしまうようなケースでも問題なく手術できるようになっているのです。
これまで紹介した心臓の動きを止めないまま狭心症に対する冠動脈バイパス手術と、傷んでいる大動脈弁をカテーテルを使って交換するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)をいっぺんに行うハイブリッド手術や、人工心肺装置を使って脳の血流を確保しながら弓部大動脈瘤と冠動脈バイパス手術を同時に行う手術などは、まさにそうした技術の進化があったからこそ実現できたといえます。
こうした最先端の手術を行って痛感するのは、「事前準備の重要さ」です。以前から、手術で何よりも大切なのは万全な準備であるとお話ししてきましたが、検査機器の急速な進歩によって、その思いがさらに強くなっています。
患者さんの心臓の状態を平面ではなく立体的に把握できるCTやエコーといった画像診断技術が開発されたことで、より理想的な手術の“設計図”がつくれるようになりました。患部にどうアプローチして、どのような処置を行えば理想的な完成形に近づけるのか。何かトラブルが起こった時は、どう対処すればいいのか。手術前に詳細なシミュレーションができるため、さらに万全な準備ができるようになったのです。