間違った歯磨きは口の健康を悪化させる 感染対策でも重要
最近もこんなケースがあったという。「歯がグラグラしてきて飲食をするとしみる」と訴えて来院した60代の女性がいた。話を聞くと、口腔内の細菌を徹底除去すれば虫歯にはならないという考え方を信じ、30年間にわたって1日3回、1回30分から1時間かけてブラッシングを続けているという。
口の中を診てみると、たしかに虫歯はできていない。しかし、歯茎が大きく後退して歯を支えきれない状態になっていて、全顎的に歯周病が進行していた。
結局、歯をすべて抜いてインプラント治療をすることになった。間違った歯磨きを続けた結果、自分の歯を失うことになってしまったのだ。
口の健康を維持するための歯磨きが逆効果にならないようにするには、正しくブラッシングすることだ。
「硬い歯ブラシを歯茎に当てて直接ブラッシングするのは絶対にやめましょう。歯だけを磨く分には問題ありませんが、歯茎に当たってしまうならいちばん柔らかいブラシを選んでください。また、電動歯ブラシは摩擦力が強力なので歯茎に当てて使うのは厳禁です。歯間ブラシは歯周病でなければ無理に使う必要はありません。歯の隙間が気になって使いたい場合は、無理にねじ込まなければ入らないような大きなサイズではなく、スカスカなくらい小さなサイズにしてください」
歯の根元の部分はセメント質でできているため黄色っぽい色をしている。この部分が露出している人は歯茎が後退していると考えていい。また、歯と歯の間に「ブラックトライアングル」と呼ばれる黒い三角形の隙間ができている人は、歯間乳頭がなくなってきている。どちらもすぐに歯磨きを見直そう。