画像診断の進歩で「肉腫」の治療にあたる機会が増えている
■腫瘍をすべて取り切ることが重要
先ほどもお話ししたように、当時は画像診断がいまほど進歩していなかったので、肉腫による症状が表れて生死をさまようような状況になった段階で、初めて手術を行っていました。その女性患者さんもそうでした。そのため、術後の抗がん剤や放射線治療もそれほど効果は望めませんでした。それが近年は、早期に肉腫を見つけることができるので、患者さんが“元気な状態”で移動でき、治療を実施することが可能になったのです。
当院を訪れる肉腫の患者さんは、がん専門病院から紹介されて来る方がほとんどです。肉腫が見つかった患者さんの多くは、まず国立がん研究センターやがん研有明病院といったがん専門病院に移ります。そこで状態を診たうえで、まずは腫瘍を取り除く手術で心臓が突然死する危険を防ぎ、その後で抗がん剤治療を行うケースと、最初は抗がん剤治療を実施して、腫瘍が小さくなってから残った腫瘍をすべて取り除く手術を行うケースがあります。
「サルコーマ」と呼ばれる肉腫の中には、抗がん剤が奏功するタイプがあるので、手術で心臓の腫瘍をすべて取り除き、しっかり機能を維持できる状態にしておけば、場合によっては転移しても抗がん剤でがんを制御し、日常生活を送れる可能性もあります。切除した腫瘍組織に有効性のある抗がん剤を各種のマーカーから特定できるようになってきたからです。そのため、われわれは手術で切除した腫瘍の断端がどんな状態だったかをがん専門病院に報告して、次の抗がん剤治療を進めてもらうのです。