鎮痛の代表的な漢方「芍薬甘草湯」は筋肉の張りが強い腰痛に使われる
前回に引き続き、腰痛に対して使用される「漢方薬」を紹介します。
今回は一般薬としても広く認知されている「芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)」についてお話しします。
構成生薬は、芍薬と甘草の2種類で非常にシンプルな処方です。漢方で「鎮痛」といえば、真っ先に名前があがる代表的な薬です。筋肉の張りが強く、手足のけいれんやこむら返り、足のつりなどを併発する場合によく使われます。
筋肉の張りが強い状態は、中医学では「気」と「血(ケツ)」が一時的に不足している状態と考えます。「気」とは生命活動を支えるエネルギーのことで、自律神経の働きに近いものとされています。「血」は体中を巡ってさまざまな組織に栄養を与えているもので、主に血流に該当します。
芍薬甘草湯は、不足している「気」と「血」を補って筋肉のこわばりや痛みを鎮める作用があるため、筋肉のけいれんを伴う腰痛にも用いられるのです。
冷えが強く下肢の痛みやしびれが続く腰痛では、芍薬甘草湯に附子(ブシ)を加えた「芍薬甘草附子湯」を使うケースもあります。附子は、ハナトリカブトまたはオクトリカブトの子根を乾燥させたもので、新陳代謝を良くして血流を改善し、体を温め、痛みをとる作用があるのです。
ただし、甘草を含む漢方薬は偽アルドステロン症が表れやすいので注意が必要です。血圧を上昇させるホルモン「アルドステロン」が増加していないのに血圧の上昇や、むくみ、体重増加が起こる場合があるのです。
また、低カリウム血症(血清中のカリウム値が低くなること)によって、脱力感や四肢のまひなど重大な副作用のきっかけとなることもあります。ですから、安易な継続使用はお勧めしません。