外国人の在宅医療 余命数カ月を宣告されたスキルス胃がんの東欧人女性
通院が厳しいので在宅医療に切り替えたいと、私たちのところに相談にいらっしゃったのは22年5月。紹介状である診療情報提供書には「余命2~3カ月」と書かれていました。
「誕生日までは難しいでしょうか。8月8日なのですが」(娘さん)
「ちょっと厳しいかもしれないです。ただ、ご本人はとても頑張り屋さんで、今もとても頑張ってくれています」(私)
「先週までは元気だったんです! ご飯も普通に食べていて、車も運転できて!」と涙を流しながら話す娘さんの姿は、私たちにとっても非常につらいものがありました。私たちにできるのは、患者さんのつらさをできる限り取り、娘さんやご友人との時間を充実したものにすることです。
吐き気があるのは、おそらく腸液がうまく流れていないのが原因と考え、それに対処する薬を投与。嘔吐が頻回に見られ、ご本人は点滴が合わなかったと思っている節があったため、生理食塩水を静脈内注射しました。
予想された小腸の閉塞に対しては、いくつかの治療法を提案。腸閉塞による腹痛や嘔吐を改善する薬「オクトレオチド」と生食点滴の治療を本人が希望されたので、それに応じた治療を行いました。
実は先日、女性は安らかに旅立たれました。嘔吐も腹痛もなく、娘さんや信頼する友人、義弟さんに囲まれての旅立ちでした。