名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

マスクの効果を評価したランダム化比較試験 0.3ポイントでも条件が変われば…

公開日: 更新日:

 日本の研究でないから意味がないというような意見も聞かれるが、それは困難だ。諸外国の研究をどう参考にするかというのが現実的な対応である。

■結果解釈のむつかしさ

 さらに結果の方も少し違った角度で見てみよう。

 この研究は1カ月の感染者で比較しているが、これが1年であったとしたらどのようなことが予想されるであろうか。もし1年間で10倍の人が最終的に感染するとしたら、マスク推奨群では18%、マスク非推奨群では21%ということに。さらに3年間であれば54%と63%ということになる。

 それも実はマスク推奨群では半分に満たない人しかマスクをしていない状況である。さらにこれが100万人の都市であれば54万人と63万人の差となり、マスクを勧めることで3年間の感染者が9万人少ないということになる。

 東京のような1000万都市では、その10倍の90万人の感染者減少になる。地球規模で考えればとてつもない数になることは誰にでもわかるだろう。

 ランダム化比較試験で効果がないという結果が出ているとなると、鬼の首を取ったように「最も質の高いランダム化比較試験で効果なしと出ているのにマスクを着けるのはバカげている」と言い出す人が出てくるが、上記で見てきたように、事はそう単純ではないのである。

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