視力が下がると認知症になりやすくなるのはどうしてか?
昨年7月、アメリカのミシガン大学が71歳以上の高齢者約3000人を対象に視力検査や認知機能検査を行った研究で、視力の低下は認知症の発症リスクを上昇させると明らかになりました。なかでも近く(手元)を見る視力に問題があるグループでは約22%の人が認知症を患っていて、反対に、現段階では認知症を発症していなくても、遠くを見る視力に中等度以上の問題があると判断された人のうち約33%に認知症の兆候が見られたといいます。
高齢者の視力を低下させる最大の要因は「白内障」です。70代の80~90%、80代以上ではほぼ100%の人が患う身近な病気で、目の中の水晶体が加齢に伴い白く濁ることで発症します。視界のかすみやぼやけ、ものが二重に見える、光がまぶしく感じる症状が特徴です。
一般的に、夜になると眠くなり朝になると目が覚めるといった睡眠のサイクルは、太陽から放出されるブルーライトを目の網膜で吸収することで保たれています。しかし、白内障が進行すると、水晶体の濁りに弱いブルーライトが網膜まで届かなくなり、体内時計(日内リズム)は崩れていき、不眠や昼夜逆転といった睡眠障害を引き起こします。
また、人が得る情報のうち80%以上は視覚から入りますが、白内障などの目の病気によって視覚が障害されると、脳へ伝わる情報量が減り、脳の情報処理の頻度が低下して脳は活性化されなくなります。ほかにも視機能が低下すると周囲が見えづらくなり、学習や歩行など、行動に制限がかかります。これらの条件が重なることで、認知症が発症しやすくなるのです。