上腸間膜動脈解離…いつもと違う腹痛は命に関わる血管トラブルの危険あり
このところ、ちょくちょく軽い腹痛が続いているなと思っていたら、ある日、急に痛みが強くなり、胃潰瘍かもしれないと病院に駆け込んだら、命に関わるケースもある「上腸間膜動脈解離」と診断された……。都内でWebデザイナーの仕事をしている50代男性の体験談だ。どんな病気なのか。循環器専門医で東邦大名誉教授の東丸貴信氏に聞いた。
◇ ◇ ◇
命の危険がある血管トラブルというと、「大動脈解離」を思い浮かべる人が多いだろう。心臓から全身に血液を送り出す大動脈が突然裂けてしまう病気で、そのまま突然死するケースも少なくない。
心臓に近い上行大動脈で解離が起こると、心臓や脳へ血液が流れなくなることもあり、死亡リスクがさらに高くなる。この解離が、腹部にある上腸間膜動脈に生じるのが「上腸間膜動脈解離」だ。
「上腸間膜動脈は、十二指腸の下部から横行結腸(大腸の一部)の3分の2程度と膵臓に血液を送って、酸素や栄養を運んでいます。その動脈の壁が裂けると、偽腔と呼ばれる空間が生まれ、そこに血液が流入し、もう一つの別の血液の通り道ができてしまう。それにより、本来の通り道である真腔が圧迫されて狭くなります。真腔が潰れたり、血栓(血液の塊)ができて詰まってしまうと、血液が送れなくなり、広い範囲で腸の壊死を招き命に関わります。一方、真腔が狭くなっても、完全に閉塞することなく虚血を起こさないレベルにとどまっている状態であれば、予後は良好なケースが多い」