糖尿病と自殺・事故リスク…70歳定年時代に備えて知っておきたいこと
59歳以下と60歳以上で自殺・事故リスクに変化があるのは、生活スタイルや心理的ストレスの差ではないか、という。
「この研究が公表された2016年は努力義務であった60歳以上定年を従業員300人以上の事業所で義務化された年ですが、当時は多くの企業は60歳定年制でした。そのため、糖尿病の合併症である神経障害や網膜症、腎症などの糖尿病の合併症による影響、つまり、仕事を続けられなくなる、不自由な生活を強いられる、食事のたびにインスリン治療をしなければならないといった生活習慣の変化や心理的ストレスが、60歳以上の人よりも59歳以下の人で強かったと推察されます。もし、この推察が正しく、70歳に定年延長されたとすれば、70歳以上と69歳以下で自殺・事故リスクが変化するでしょう」
そうなった場合、現役世代の糖尿病患者数が激増し、自殺・事故リスクの高い人たちが格段に多くなる可能性がある。
「厚労省が『平成28年国民健康・栄養調査』と総務省統計局の『人口推計(2018年10月1日現在)』から割り出した数値を見ると、2016年で糖尿病が強く疑われる人とその可能性が否定できない人の総数は60~69歳で565.2万人です。この人たちは60歳定年制ではそれほど自殺・事故リスクが高くなかった人たちですが、70歳定年制となると様相が違ってくる可能性があります。定年延長はそうしたリスクもはらんでいることを知っておく必要があるのです」