元の心臓より小さくなったので…スギちゃん先天性の心疾患「心房中隔欠損症」を振り返る
手紙をもらってキズを隠さなくなった
術後の傷口は痛かった。針金みたいな糸が傷口から出ていて、触るとわかるし、痛いので母ちゃんが夜通しさすってくれたことも覚えています。
だんだん治るにつれて、夜になると両親が自宅に帰ってしまうので一人になるでしょう? そうなると怖いんですよ。心臓系の病棟なので唇が真っ青の人が多いし、仲良くしてくれた赤毛の兄ちゃんが亡くなるという経験もしました。順調にいけば3週間で退院できるはずだったのに、不幸なことに肝臓の数値が上がる病気を併発してしまい、その数値が下がるまで退院できず、結果的に半年以上も入院することになったんです。
肝臓の数値を下げる薬は糖がいっぱい入っている点滴でした。なので、どんどん太っていくんです。さらにお見舞いでいただく甘いものが毎日たくさんあって、その意味では天国でしたよ(笑)。
ただ、毎朝ナースステーションに行って体重計に乗って自分で数値を書かなくちゃいけないんですけど、毎日数字が増えていくのが恥ずかしくて、ウソの体重を書いたことがありました。すぐに看護師さんにバレましたけど(笑)。入院当時はガリガリに痩せていたのに退院時には10キロぐらい太ったんじゃないかな。
院内では、ひな祭りにお内裏さまになってひな壇に座ったり、いろいろなイベントに駆り出されました。すっかり古株になった後半は、病棟のアチコチに行ってニュースを嗅ぎまわるジャーナリストごっこを楽しんでいました。
ひとつだけ親に申し訳ないと思っているのは、親なら絶対に聞きたくないだろうことを言ってしまったこと。「なんで俺だけこんな体に産んだんだ!」って。今、自分が親になったから本当にわかる。子供にそんなことを言われたらと思うと「悪いことをしたな~」ってつくづく思います。
小学校3~4年生にかけては遠足も行けなかったし、何にもできていない。でも病気をしたことによってほかの人が経験できないことを経験したし、いろんなことを考える時間がたっぷりあったのもよかったと思っています。
手術のキズは、当時は見られるのが嫌で隠していました。でも、大人になり、芸人になって、僕が番組でお風呂に入るシーンが映ったとき、それを見た同じ病気の小さい子が、「スギちゃんと同じだ」ということで、それまで隠していた手術痕を恥ずかしがらなくなったというお手紙をいただいたんです。それで「キズもええな」と思い、それ以降、「隠しましょうか」とスタッフさんに言われるたびに「全然平気です」ってキズを見せるようになりました。
「ワイルドだろ~」というギャグも、もしガリガリのままだったら生まれていなかったかもしれない。太っているからこそ生きるギャグ。お医者さんに感謝です。
(聞き手=松永詠美子)
▽1973年、愛知県出身。95年から芸人を始め、2001年にお笑いコンビ「メカドック」として活動。08年にコンビを解散しピン芸人となる。「ワイルドだろ~」の決めゼリフで人気となり、最近は俳優としてドラマ出演するなど活躍している。レギュラー番組にBS朝日「迷宮グルメ 異郷の駅前食堂」などがある。