寒くなってくると認知症患者に増える相談「薬による蕁麻疹ですか?」
寒くなってくると夜間頻尿の相談が増えると10月29日付号でお話ししました。同じく寒くなってくると増えるのが、皮膚にできた発疹に関する相談です。
「急に蕁麻疹が出てきました。これは薬の影響でしょうか?」
認知症患者さんで発疹が出てきた場合、ご家族がまず疑うのは薬による蕁麻疹です。アルツハイマー病をはじめ認知症があると、症状の進行を抑えるため、または症状を緩和させるため、さまざまな薬を飲んでいますからね。
薬による蕁麻疹かどうかでポイントとなるのは、主に次の2点です。まず、新しい薬を使い始めていないか。薬剤性蕁麻疹では新しい薬の投与から1、2日から2週間程度で症状が出てきます。
次に、どういった場所に出ているか。薬剤性蕁麻疹では、顔から首から背中から腕から足まで、全身に発疹が出ます。赤い点々があちこちにあり、ところどころは赤い点々の場所がかたまり島のように盛り上がっている。
この2点(特に、発疹の出方)が否定され、かつ「寒くなってから」「高齢者」という2つのキーワードが重なっていれば、乾燥による発疹が考えられます。老化現象のひとつとして皮脂腺から皮脂を出す機能が落ちてくるので、肌が乾燥しやすくなる。寒くなればより乾燥する。こういった乾燥肌は布団の中で温まると痒くなり、無意識にかきむしってしまい、ひどい発疹となるのです。皮膚の乾燥の発疹では、手が届く場所(=かきむしれる場所)にできるのが特徴です。
一番の対策は、保湿です。薬局やドラッグストアに手頃な価格帯の保湿剤が販売されているので、それらを風呂上がりに塗る。また入浴時はゴシゴシ石鹸でこすらず、手のひらでよく石鹸を泡立て、優しく洗うようにしてください。「乾燥肌用」「しっとり」などとパッケージに書かれた石鹸を用いるのもいいでしょう。お湯につかりすぎると肌が乾燥しやすくなるので、入浴時間もほどほどに。
痒さにまかせてかくと、痒み成分の分泌が促され、より一層痒くなります。就寝時の痒みは眠りを浅くし、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの蓄積を促し、また脳の老化を進めます。痒みのコントロールは、認知症対策にもつながります。