不整脈に対する「重粒子線治療」の期待と課題
■副作用のさらなる検証が必要
不整脈の治療は対症療法である薬物治療のほか、前回お話ししたカテーテルアブレーションが実施されるケースが主流です。足の付け根などの血管からカテーテルを挿入し、異常な電気信号を発生させている心筋にカテーテルの先端を押しつけ、高周波の電流を通電して組織を焼いたり、冷却ガスで組織を壊死させて異常な電気信号を遮断する治療法です。
重粒子線による不整脈治療も同じような狙いがあると考えられますが、さらに、重粒子線の作用に抗不整脈効果があるという報告もあります。重粒子線が心臓の同期的収縮に重要な役割を果たしているCx43(心室ギャップ結合蛋白コネキシン43)の発現を促すことで、不整脈が抑制されるというのです。
こうした研究などもあり、2023年2月には、量子科学技術研究開発機構と東海大学の研究グループが、難治性致死性心室不整脈(心室頻拍)に対する重粒子線治療を行いました。患者さんは4日後に退院して有害事象もなく、経過を観察中だといいます。
一般的にも重粒子線治療が不整脈治療に使われるようになるにはさらなる研究や試験が必要ですが、将来的に治療の選択肢のひとつになれば患者さんにとっては朗報といえるでしょう。