「睡眠不足」は記憶力、精神面、認知症リスクに影響を与える
東北大学の瀧らによる調査によると、睡眠不足は長期的な記憶についても問題を起こすことが分かっています。5歳から18歳までの健康な子ども290人(男女比は半々)の頭部のMRIを撮影して脳の形態を調べると同時に、アンケートによって同じ子どもたちの生活習慣を調査しました。
すると、睡眠時間が1日5~6時間ぐらいの子どもたちよりも、9~10時間ぐらいの子どもたちのほうが海馬が1割程度大きかったという結果が分かりました。つまり、睡眠時間が長い子どもは、短い子どもよりも海馬が大きくなる傾向があるといえるのです。
睡眠不足が脳に悪影響をもたらす研究は多数存在します。
国立精神・神経医療研究センターの研究チームが行った実験(2013年)では、睡眠不足時にはネガティブな情動刺激に対して扁桃体の活動量が増大することが明らかになっています。
この実験では、健康な成人男性14人を対象に、5日間の1日8時間睡眠と同4時間睡眠の両方を体験してもらうというものでした。その上で、MRIを用いて脳活動の変化を観察したところ、短期間の睡眠不足でも情動的な不安定が増大--寝ていないときにネガティブな情報を受け取ると、いつも以上に精神的に落ち込んでしまうことが分かったといいます。