地域が整備すべき「アドバンスケアプランニング」とはなにか
人は、もしもの時まで、もしものことは考えません。ある自治体の在宅医療連携会議に出席した際、愕然としました。課長さんが「アドバンスケアプランニングのために、救急体制と看取り体制を整えるのが、私たちの自治体の課題です」と言うと、担当委員の医師もそれに強く同意したのです。それでは昭和時代の医療ではないでしょうか。
地域では、まだそういう認識でアドバンスケアプランニング政策を考えていたのです。つまり、患者さんが現状から回復して、より良く人生を生きる体制を整えるのではなく、最後の救急体制と看取り体制だけを整えれば、より良い暮らしになると考えているのです。
いまは、地域に暮らす方がもしもの時に、救急体制と看取り体制だけでなく、「地域で回復する体制」を考える時代ではないでしょうか。地域で暮らす高齢者にはとても大切な問題なので、今回は「アドバンスケアプランニング」についてお話しします。
アドバンスケアプランニングは、Advance(あらかじめ)Care(医療・介護・世話)Planning(計画する)の頭文字を取って「ACP」と呼んでいます。もしもの時のために、医療や介護について前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことをいいます。日本では平成30(2018)年に厚生労働省がACPの愛称を「人生会議」としました。最善の介護には、地域のACP政策が強く影響するのです。