既往症・持病持ちの治療(3)心筋梗塞の既往症がある肺がん患者はどうすればいいのか
がん治療を行うにはがんの確定診断が必要だ。しかし、持病や既往症によっては検査ができずに確定診断に至らないケースがある。そのときどうすればいいのか? 今回は心筋梗塞の既往症がある肺がん治療について考えたい。温熱療法によるがん治療を手掛ける「東京府中ときクリニック」(東京・府中市)の土岐敦院長に話を聞いた。
80代男性は一般のエックス線検査で2センチ大の腫瘤状の影が右肺下に見つかった。肺がんが強く疑われた。軽いサルコペニアと認知症、持病に心筋梗塞の既往と狭心症があり、気管支鏡検査が難しいと判断された。
「患者さんのご家族によると、主治医からは『がん治療をするには気管支鏡検査が望ましいが検査中に狭心発作や心筋梗塞を起こす危険がありお勧めできません。患者の年齢と既往歴からも、がん治療は負担が大きく寿命を縮める可能性があります。現状では何もすることはありません』と言われたそうです」
患者本人は「年だから」と言い、表面上は医師の提案を受け入れたように見えたが、本心は別。「手術は嫌だが薬による治療はしたい」と考えていた。家族も主治医の説明に納得できなかった。