「言葉」を増やすことは自分の可能性を増やすことになる
先の研究に照らし合わせると、まさにこうした語彙力の豊富さが感情表現につながるだけでなく、相手に気持ちをより伝えられるツールになるというわけです。
それを証明する実験が、2017年に沖縄県うるま市で実施されています。中学生を対象に、生徒が自ら「ことばノート」を作成し、それを表現活動に活用することで、言語感覚、学びに向かう力などにどのような変化が生じるのかを調べました。実験は、まず芥川龍之介の「蜜柑」を読んでもらい、「印象に残ったもの・気になる表現を引用する」「ことばノートのことばを使う」ことを示した上で、初発の感想をまとめてもらいました。
生徒たちは、おのおのに「不思議」「悲しい」「やさしい」といった表現を書き出し、その後、グループで考え、「不思議→変、奇妙」「かわいそう→悲惨」という具合に、そのほかの表現を導き出すようにディスカッションしました。
そして、同様の条件で芥川の「トロッコ」の感想をまとめたところ、初回の「蜜柑」では、ことばノートを活用してまとめることができた生徒が全体の約31%であったのに対し、2回目の「トロッコ」では、約45%にまで増加したといいます。言葉を知ること、語彙を増やすことは、確実に自分の表現や感受性を豊かにしてくれるというわけです。