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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

原発不明がんで亡くなった森永卓郎さんの訃報で思うこと

公開日: 更新日:

 森永さんは当初、膵臓がんと公表されましたが、がんに関係する遺伝子を調べる検査から「95%の確率で膵臓がんではない」との結果が出たようで、原発不明がんと診断されたようです。膵臓がんの95%に見られるKRAS遺伝子の変異がなかったのかもしれません。

 森永さんは、免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボを使用されたと報じられました。がん細胞は免疫をかいくぐる仕組みを備えていますが、その仕組みを解除してがんを攻撃しやすくするのが免疫チェックポイント阻害剤です。原発不明がんの治療には理にかなっていて、その使用が公表された昨年は森永さんも調子がよかったのか、メディア出演や執筆などを精力的にこなされていました。

 がん専門医の私が森永さんの訃報に触れて思うのは、最期まで森永さんが仕事を続けてこられたことの頑張りのすごさです。確かに原発不明がんは厄介ながんですが、本当に悪くなるのはほかのがんと同じように末期になってから。それまではきちんと適切な治療を受けていれば、生活をまっとうできるということです。


 その意味は、とても重いでしょう。家族や仕事仲間と時間を共有でき、思いを語り、つなげることができます。もちろん痛みがあれば、森永さんが使用されたように医療用麻薬を適切に使用して痛みを抑えることは必要で、そうすれば自分の生き方をまっとうして最期を迎えられるのが、がんだと思います。森永さんのご冥福をお祈りします。

【連載】Dr.中川 がんサバイバーの知恵

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