(8)人間ドックで兆候をつかまえたい…自覚症状あり→病気が見つかるでは手遅れも
「健康診断で心雑音を指摘されました」──といって患者さんがやってきます。職場の健康診断ですから、病気の自覚がない50歳前の人ばかりです。見つかった病気は僧帽弁閉鎖不全症。今まで仕事をしていたわけですから、自分ではあまり症状を感じない状態です。
4月の終わりごろ、S・Eさんが私の診察を受けました。
「相当に悪いですよ。心臓も肥大しているし、不整脈も出ています。すぐに何とかしないと大変なことになりますよ」
「わかりました。でも連休明けに会社の昇進試験があるんです。それまでは頑張らないと」
半年たって奥さんが病院にやってきて叱られました。
「どうして主人にもっときつく言わなかったんですか!」
ご主人は5月の連休中にご自宅で突然、亡くなられたのです。
健康診断や人間ドックで病気が見つかり、助かった人はいっぱいいます。人間の体は自覚症状がある→病気が見つかる、では手遅れな場合が多いのです。あらかじめ何らかの兆候をつかまえる方法をできるだけ試すべきです。