米軍の方法を改良した「5・5・5呼吸法」はなぜ細胞呼吸を活性化するのか
判断を一歩間違えれば、多くの命が危険にさらされる。いかなる失敗も間違いも許されない──。そんな米軍や警察特殊部隊で採用されているのが「タクティカル・ブリージング」と呼ばれる呼吸法。これをベースにハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が独自に改良したのが「5.5・5呼吸法」で、極度の緊張状態でも心身のコントロールを取り戻せるという。
「立ち姿勢でも座った状態でもよいので楽な姿勢をとります。お腹をひっこめながらゆっくり息を吐きます。その状態で5秒息を止め、今度はお腹を膨らませながら5秒かけて息を吸います。5秒息を止めた後に、お腹をひっこめながらゆっくり息を吐きます。これを5~6回繰り返すのです」
前回紹介した「4.4・8呼吸法」といい、今回の「5.5・5呼吸法」といい、息を吸う時間と同じだけ、吐く時間を設けるのはなぜか? それは細胞呼吸を効率化するため、血液中の二酸化炭素濃度を極端に低下させないための工夫だと根来医師は言う。
「以前もお話ししましたが、肺で取り込まれた酸素はヘモグロビンとくっつき、血液の中を移動し、目的の細胞に到達すると酸素を切り離して細胞内にあるエネルギー生産工場であるミトコンドリアに渡します。このとき、血液中の二酸化炭素濃度が低いと酸素の切り離しが行われにくくなり、酸素と結合した状態のヘモグロビンが漂うことになって、細胞呼吸の非効率につながります」