肩甲骨<下>「ストレッチ」と「呼吸トレーニング」でリセット
肩甲骨の動きは、大きく分けると6種類ある。①肩を上げるときに肩甲骨を上げる「挙上」②肩を下げるときに肩甲骨を下げる「下制」③胸を張ったり、腕を後ろに引いたりするときに肩甲骨を寄せる「内転」④肩をすぼめたり、腕を前に突き出したりするときに肩甲骨を開く「外転」⑤腕を上げるときに肩甲骨を開いて上げる「上方回旋」⑥腕を下げるときに肩甲骨を寄せて下げる「下方回旋」。
しかし、日常生活の中で6種類すべての可動域を使う機会はとても少ない。すると、加齢とともに肩甲骨を動かしている筋肉が衰え、肩甲骨と筋肉をつなぐ腱、肩甲骨と鎖骨をつなぐ靱帯が硬くなる。
こうなると、体にさまざまな不調を引き起こす原因になるのだ。
「肩甲骨リセット」(文響社)の著者で、ハーバード大学医学部とソルボンヌ大学医学部の客員教授を務める根来秀行医師が言う。
「肩甲骨の動きが硬いと、上半身の血流が悪くなります。また、前かがみの姿勢になるので、横隔膜の動きが制限されて呼吸が浅くなり、自律神経が乱れます。これらは、全身の毛細血管の劣化にもつながります。それで、『だるい』『疲れが取れない』『ぐっすり眠れない』『血圧が高くなる』『体が冷える』など、さまざまな不調が表れるのです」
そこで硬くなっている肩甲骨をほぐし、動きが悪くなっている横隔膜をよみがえらせる健康法として、根来医師が考案したのが「肩甲骨リセット」だ。毎日1種類の「肩甲骨をほぐすストレッチ(全6種類)」と「呼吸トレーニング」を組み合わせて行う。肩甲骨をほぐすストレッチのやり方はこうだ。
■外転をほぐす
【ぐーっと肩甲骨開き】
①椅子に浅く座り、背筋を伸ばし、胸の前で両手を組む②ゆっくり息を吐きながら腕を前に伸ばす。限界まで伸ばしたところで20秒キープする。このとき肩甲骨が左右に開いているのを意識する。(1日の目標20秒×3回)
■上方回旋・下方回旋をほぐす①
【肩甲骨を前後にクルクル】
①椅子に浅く座り、両肘を曲げ、指先を左右の肩先にのせ、胸を張る②両肘で円を描くように、腕全体を前から後ろに5回、後ろから前に5回回す。回しているときも指先が肩から離れないようにする。(1日の目標前後各5回×3セット)
■上方回旋・下方回旋をほぐす②
【肩甲骨をつかんでクルクル】
①背筋を伸ばした立ち姿勢で、左腕を上げ、右手の親指を左腕の脇の下に入れ、親指以外の4本の指で左側の肩甲骨をしっかりつかむ②左腕を肩の高さに下ろし内側に5回、外側に5回ずつ回す。左右の腕を入れ替えて、同じように内側と外側に5回ずつ回す。(1日の目標内外各5回×3セット)
■挙上・下制をほぐす
【タオルでプルダウン】
①両足を肩幅に開いて立つ。タオルを肩幅よりも長めに持ち、腕を真上に上げる。両腕はしっかり伸ばす②タオルが首の後ろにくるように、肘をゆっくり曲げたら、肘をゆっくり伸ばしながら、①の姿勢に戻る。
これを10回繰り返す。(1日の目標10回×2セット)
■内転をほぐす①
【エアでローイング】
①両足を肩幅に開いて立ち、両腕を真っすぐ前に伸ばす。指先まで伸ばすように意識する②両肘をゆっくり水平に引き、肩甲骨を寄せる。限界まで引いたら5秒キープし、①の姿勢に戻る。
これを5回繰り返す。(1日の目標5回×3セット)
■内転をほぐす②
【コーナー壁押し】
①壁のコーナー(角)の正面に立ち、肘を曲げ、両手を壁につける②足の力を抜いて、体重を前にかけ胸を突き出す。10秒キープしたら①の姿勢に戻る。
これを3回繰り返す。(1日の目標3回×3セット)
次は、どれか1種類の「肩甲骨ほぐしストレッチ」とセットで行う「呼吸トレーニング」。やり方はこうだ。
■横隔膜をよみがえらせる
【4・4・8呼吸法(腹式呼吸)】
①椅子に座り、両手をヘソの上に置く。息を吐き切る②お腹を膨らませながら、4秒かけて鼻から息を吸う③4秒間、息を止める④お腹をへこませながら、8秒かけて鼻から息を吐く。
①~④を2回繰り返す。(1日の目標2回×3セット)
「肩甲骨をほぐすストレッチは、どの種類も1回30秒以内。3セット行っても、90秒もかかりません。4・4・8呼吸法も1回30秒。3セットでも90秒です。つまり『肩甲骨リセット』はトータル3分以内の健康法なので誰でも簡単にできます。毎日コツコツ、習慣にすることがポイントです」