(19)このままでは共倒れ…解決の糸口がまったく見えない
母が認知症であること、そして入院したことを受け入れられない父と、電話で話すたびに口論になった。やがて、私は父との連絡を避けるようになっていった。
ある、冷たい雨の降る冬の初め。仕事中に叔母から電話がかかってきた。実家の庭には大きな柿の木があり、1年おきに柿の実がたくさんなる。落ちた実が庭を汚さないようにと、父は脚立を立てて柿の実をちぎっていたらしい。しかし、バランスを崩して転倒し、コンクリート部分に落下。頭から血を流しているという話だった。
たまに実家の様子を見に行ってくれている叔母が、頭に血がこびりついている父を見て問いただすとそういうことだったらしい。「病院には行かない」とかたくなに拒否したが、説得して近所のクリニックで手当てしてもらったというのだ。
私は困惑するしかなかった。東京からすぐに熊本の実家に帰れる状況ではなく、父自身が助けを拒んでいる。なにより、私にその出来事を知らせなかった。
そんな折、さらなる知らせが届いた。母の病院に着替えを届けるなどのサポートをしてくれていたもうひとりの叔母が、脳梗塞の後遺症で倒れてしまったというのだ。