iPS細胞で心臓そのものをつくり出すのは極めてハードルが高い
心臓弁などのパーツをつくるほうが有用
ですから、そこをゴールに設定するのではなく、心臓がきちんと機能するために必要なパーツをそれぞれiPS細胞を使って再生し、傷んだり壊れたりして機能しなくなった構造物と入れ替えるという方向を目指すほうが現実的です。
実際、試験的な臨床応用が進んでいるいくつもの再生医療、iPS細胞から分化させた心筋細胞をシート状にした心筋シートを移植して壊死した心筋の代わりに機能させる方法や、心筋球と呼ばれる心筋細胞の塊をつくって壊死した心筋に注入する方法は、その第一歩といえます。
心筋は一度壊死してしまうと、蘇ることはありません。そのため、壊死した部分は切除して捨てるか、または血流を改善させて動く部分があれば、少しでも機能させるための処置を行ってきました。壊死した心筋の機能をどうやって復活させるかは、いちばん難しい分野といえます。そうした従来の治療をカバーするために、iPS細胞でつくった心筋細胞を使って、より広い範囲を補うことを目指しているのです。
そこをゴールとした場合を考えると、これから10年、15年くらいのスパンで階段を上がっていけるようなレベルに発展していると感じます。