(21)入院から3カ月…ようやく“会えた”母は表情を失っていた
そんなことをぐるぐると考えていた時、病院から連絡があった。事件が起きたのだ。
母が罹患しているレビー小体型認知症は、状態が安定している時と悪化する時の波があるという。ある時、少し意識がはっきりしてきた母が、「なぜ自分はこんなところにいるのか」と混乱し、死んでしまおうと院内の階段で身を投げかけたというのだ。その一件で母は「希死念慮あり」と判断され、閉鎖病棟の個室に移されることになった。もちろん個室料は上乗せされる。
私はすぐに地域包括支援センターの担当者に連絡を取った。もうこれ以上、時間を無駄にするわけにはいかない。母が今後どこで、どのように生活していくのかを決めるには、早急に介護申請を進める必要がある。母が退院する頃には、適切な支援態勢が整っていなければならない。焦る気持ちを抑えながら、手続きを急ぐよう頼んだ。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。