“ロックンローヤー”が熱く語る 41歳で弁護士を目指した決意と「核なき生活」実現への執念

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原発事故の責任は電力会社だけにあるのか

 責任は安全神話をうのみにして対策を施さなかった電力会社だけではない。島弁護士は2014年に「原発メーカー訴訟」を起こし、原子力の危険から免れて生きる権利「ノー・ニュークス権」の実現を目指した。

 少し補足すると、ニュークスとは「原子力/核」の意味で、日本国憲法では平和的生存権(前文)、幸福追求権(13条)、社会的生存権(25条)が保障されていることを前提に、「核のない生活」を求めるものだ。

 島さんが動くきっかけは2012年9月4日、ある環境系ネットワークのメーリングリストに投げかけられた名前も顔も知らない人からの質問だったという。

「福島原発について原発メーカーの責任を問うことはできないのですか」

 島さんは「原子力損害賠償法という法律に責任集中という原則が規定され、原発事故については電力会社だけが責任を負うことになっているため、原発メーカーの法的責任を問うことができない」といったんは回答したが、その後、翻意して原発メーカー訴訟の弁護団長となった。

「原発メーカーに責任なしが保証されている限り、メーカーは傷を負うことなく原発をつくり続けていく。これを止めるのはノー・ニュークス権しかない」

 約4200人の集団訴訟の弁護団長となり、2014年1月に「原発事故発生時に原発メーカーは責任を“免除される”とする原子力損害賠償法は違憲である」と原発メーカーの賠償責任を訴えた。ゼネラル・エレクトリックHDや日立、東芝の大企業が相手だった。

「被ばくするかもしれない不安や恐怖に怯えることなく生きたいという願いは全人類の権利だということを裁判で主張しようと思った。そしてこの新しい人権をもっと広めるにはロックンロールの力を借りるしかないと思い、それまで少しずつ再開していたバンド活動をリンクさせようと考え、バンド名も島キクジロウ&NO NUKES RIGHTSにしました」

 ステージで歌い、CDを作り、Tシャツやステッカーも販売。社会を変革したいという熱い情熱が、行動を促した。

 ところが、この原発メーカー訴訟は2019年1月23日、最高裁で棄却されてしまった……。

■地熱、風力などの再エネで環境を取り戻す

 それでもへこたれない弁護団は「司法を諦めない。また立ち上がるだろう」と宣言し、「ノー・ニュークス国賠訴訟」へとつながっていく。

 現在、島さんは、一般社団法人えねべんの代表理事、ソーラーシェアリング推進連盟の相談役としてエネルギー問題に取り組んでいる。初志貫徹、ロック魂には一切のブレがない。

「世界有数の火山国であると同時に海に囲まれた日本が持つ地熱発電や洋上風力発電は再生エネルギーとしてのポテンシャルが極めて大きい。農地の上に太陽光パネルを並べるソーラーシェアリングも重要です。もちろん問題は山積み。でも日本が本気でやれば世界でトップランナーになれる」

 持続可能なエネルギーを模索する日本。環境問題をライフワークとするロック弁護士の島さん。名もなき市民の草の根運動だって社会を変える原動力となる。

 ◇  ◇  ◇

▽島昭宏(しま・あきひろ) 1962年、名古屋市生まれ。早稲田大学政経学部卒。ミュージシャン、学習塾、カフェ、音楽レーベル経営など幅広く活躍。環境問題・人権問題に興味を持ち、47歳で司法試験合格。

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