【能登半島地震】現地ルポ「若者は災害の多いこの町を捨てて安全な地域へ」と町の区長が吐露
能登半島地震で深刻な被害を受けた石川県珠洲市。日刊ゲンダイ記者が現地の市役所に到着したのは9日の午後1時過ぎ。3階に設置された災害対策本部では、国交省から派遣された職員など多くのスタッフが慌ただしく動き回っていた。
市の職員は「実際の被害や避難者の人数、支援物資の流通など、状況は目まぐるしく変わっています」と話し、市役所でも状況を完全に把握しきれてないようだ。廊下にあるホワイトボードには、被害状況や避難所からの要望などのメモがびっしりと書き込まれている。電気が復旧した地区もあるが、市内のほぼ全域で断水が続き、復旧は見通せない。
津波の被害にあった市の中心部に近い飯田町は、辺り一面が土砂で覆われていた。津波の力はすさまじく、そのまま10メートルほど流された家屋もあれば、1階部分がはぎとられ、ほぼ柱だけになっている家もあった。
一方、中心部から東の蛸島町では家屋の倒壊が目立った。地域によっては全壊が4割、半壊が5割と、被害をまぬがれた家屋はほとんどなかった。なんとか形を保っている建物も、柱や壁が傾きいびつな形をしており、今にも倒壊しそうだ。崩壊した建物の残骸が立ちふさがり、人が立ち入ることさえできない場所も。同町には人影はほとんどなく、ガランとしていた。
「ほとんどの町民は、親戚などのツテをたどって町の外に疎開しているんです」と話すのは、同町栄区長の三瓶尚登さん(67)。「若者は災害の多いこの町を捨てて安全な地域に住んでほしい」と話す。ますます少子高齢化が進んでしまうのだろうか。