著者のコラム一覧
小林佳樹金融ジャーナリスト

銀行・証券・保険業界などの金融界を40年近く取材するベテラン記者。政界・官界・民間企業のトライアングルを取材の基盤にしている。神出鬼没が身上で、親密な政治家からは「服部半蔵」と呼ばれている。本人はアカデミックな「マクロ経済」を論じたいのだが、周囲から期待されているのはディープな「裏話」であることに悩んで40年が経過してしまった。アナリスト崩れである。

「ゴジラは宝」で米アカデミー賞受賞! 東宝・松岡宏泰社長の“知的財産戦略”が結実

公開日: 更新日:

 アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞の各賞の発表がロサンゼルスで行われ、視覚効果賞に山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が選ばれた。視覚効果賞を日本の作品が受賞したのは初めての快挙だ。

「ゴジラ-1.0」は2023年、日本で公開された実写映画では1位のヒットを記録したほか、アメリカでも邦画の実写作品として歴代1位を記録している。アメリカの観客、そして映画製作者を驚かせたのは、「わずか35人の職人集団が日本の古典的な特殊技術とデジタル技術を組み合わせることで、リアルで迫力ある映像を作り上げたこと」(関係者)にある。

 東宝の松岡宏泰社長は、「ゴジラ-1.0の製作費はハリウッド大作の製作費の金利程度だ」と豪語している。少ない製作費で最大の効果を生むシステム、ゴジラ躍進の陰には、松岡氏のしたたかな海外戦略が隠されている。

■55歳で社長に昇格

 松岡宏泰氏が社長に昇格したのは22年3月、55歳の若さだった。松岡氏の父方の曽祖父は宝塚劇場を創設するなど阪急東宝グループの創業者で、商工大臣などを歴任した小林一三氏。母方の曽祖父は松岡汽船創業者の松岡潤吉氏。父、松岡功氏も東宝の名誉会長を務めている。また、実弟は元プロテニスプレーヤーで、スポーツリポーターとして知られる松岡修造氏だ。宏泰氏の東宝社長就任は、創業家への継承であり、「ゴジラ-1.0」のアカデミー賞受賞はまさに金字塔となったわけだ。

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