著者のコラム一覧
村山治ジャーナリスト

1950年、徳島県生まれ。1973年に早稲田大学政治経済学部を卒業し毎日新聞社入社。1989年の新聞協会賞を受賞した連載企画「政治家とカネ」取材班。1991年に朝日新聞社入社。東京社会部記者として金丸事件、ゼネコン汚職事件、大蔵省接待汚職事件などの大型経済事件報道に携わる。2017年からフリー。著書に『特捜検察vs.金融権力』(朝日新聞社)、『検察 破綻した捜査モデル』(新潮新書)、『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋)『工藤會事件』(新潮社)など。最新刊は『自民党と裏金 捜査秘話』(日刊現代/講談社)

安倍派会計責任者から不記載中止の進言を受けた幹部は誰か…マスコミは真相解明を諦めるな

公開日: 更新日:

各紙は地味な扱い、フォロー報道もなし

 しかし、規正法改正案の強行採決で予定通り国会閉会の流れとなったためか、各社の扱いは概して地味。裏金事件をリードしてきた朝日の扱いは社会面2段だった。

 読売はその幹部は下村氏と実名で報じ、共同通信はこれに先立つ6月はじめに下村氏が松本氏に再開を要求したと派閥関係者が特捜部に供述していたと報じていたが、下村氏は否定した。

 エポックは国会閉会後の7月9日の第3回公判の証言だった。

 松本被告は、検察側から政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載しない運用をやめようと提案したことはなかったかと問われ「19年以降の派閥幹部に(やめた方いいと)何度か話したことがある」と述べたのだ。

 安倍派の幹部政治家が、松本被告から進言を受け同派が政治資金規正法違反を犯しているとの認識を持った可能性を示す重要証言だった。しかし、検察側はその幹部の氏名や反応を尋ねることはなく、詳しい経緯は明らかにならなかった。

 立件対象にならなくても重大な政治スキャンダルだ。しかし、各紙の扱いは朝日が社会面2段など総じて地味な扱い。フォローの報道もいまのところない。

 検察側はどういう意図でその質問をし、松本証言を引き出したのか――。国会閉幕で審議に影響がなくなったため、真相の一端を明かすヒントを提供した、と考えるのはうがちすぎか。

 松本証言を素直に受け取れば、状況から見て安倍派会長だった細田博之安倍晋三両氏のいずれかとの見方もできるではないか、ということになるが、いかんせん2人とも故人。検察も追及のしようがない。

 ただ、いきさつはどうあれ、国民が知りたい事実のひとつであることは間違いない。マスコミ各紙は是非とも真相を掘り起こしてほしい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  2. 2

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  3. 3

    日経新聞コラム「私の履歴書」で、伊藤忠の“ドン”岡藤正広会長の肝心なネタがスルーされた思惑

  4. 4

    吉村府知事が語った大阪万博の「魅力」に失笑買い話題騒然!地方局TV情報番組で売り込み発言も具体性ゼロ

  5. 5

    開幕まで2カ月も大阪万博ご難続き…入場券販売不振で“政敵”に泣きつき、海外パビリオン完成もわずか数カ国

  1. 6

    「貸金庫事件」の三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取の全銀協会長就任にOBらが懸念

  2. 7

    ドミノ・ピザ大量閉店で見えた業界の“地殻変動”…今やライバルは、ピザハットとピザーラだけにあらず

  3. 8

    備蓄米放出でも政府はコメ価格を下げる気なし…識者が見解「相場を維持したい」思惑とは

  4. 9

    ガソリン全国最高値の長野県「石油商業組合」に独禁法違反の疑いでメス! 公取委が重い腰上げた裏に自民の弱体化か

  5. 10

    大阪万博“引き抜き人事”に労組が抗議書提出の異常事態…府職員からは「通常業務さえままらない」の悲鳴

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…