トライアウトで見えたプロ野球選手の運命論
間近でみた堂上兄のロングティー
先日、トライアウトが行われた静岡の草薙球場に出かけた。気になる選手がいた。元中日の堂上剛裕(29)である。
入団テストを経て、巨人入りが決まった彼を、昨年の春季キャンプのときに間近で見させてもらったことがある。
個別練習で堂上と、同じく巨人入りが決まった吉川大幾の2人が三塁ベンチ前で並んでロングティーをやっていた。僕は三塁ベンチで彼らの斜め前の位置から観察していた。とりわけ堂上はこれぞ野球選手という素晴らしい体つき。力強いスイングで放たれた打球は何度もスタンドインした。若さに満ちあふれ、これぞプロだと感じ入った。
その堂上がわずか1年半後にクビになり、トライアウトの会場にいる。06年高校生ドラフトで3球団の競合の末に1巡目入団した弟・直倫も目立った成績を残せていない。兄弟の入団時に寮長だった父・照(通算35勝)ほどの活躍ができるかも不透明だ。
僕は思いをめぐらす。剛裕がもし中日とは別のチームに入団していたら、こうしてトライアウトを受けていただろうか。直倫の外れ1位で巨人に入団した坂本勇人は看板選手に成長したが、巨人が直倫を引き当てていればどうなっていただろうか、と。プロ野球選手の運命は、入団先によって大きく左右されるものだと思う。